ありがと

抜けるような高い空に時折吹き抜ける風はとても青く、大地にそよぐ木々は夏の名残を思わせる程にあざやかで、ゆっくりと枯れ逝く一葉を戯れに大地に落としては、かさりと乾いた音を辺りに響かせる。     &nb […]

続きを読む… from ありがと

2011/09/21

一年目の9/21、一周忌だと騒ぐ長瀬を太一が殴るのを見ながら全員で大騒ぎをした。 当然、酒はなし。 二年目の9/21、上三人が乾杯するのを羨ましげに見下ろしている二人に片目を軽く瞑ってグラスを渡したのは山口。 三年、四年 […]

続きを読む… from 2011/09/21

ことのは

空が抜けると言うよりは、果てのない空 と小さな呟きが草の香りを孕んだ風をふわりと揺らす。 気持ええなあ 久しぶりに見る青い空なのだ と城島は、僅かに眼を細めると、ぶらぶらと行き場のない両手両足を大きく広げて、ばたりと空に […]

続きを読む… from ことのは

出逢った瞬間

出会ったのは、まだ、中学生の時だった。 ドラマの中で見たことのある横顔が、ふとこちらを振り返る。 その瞬間、ふうわりと大気が揺れた。 柔らかな日射しの差し込む、だが、しかりと閉じられた空間。確かにここは四面四角なコンクリ […]

続きを読む… from 出逢った瞬間

つれない態度に

むっと顔を膨らませ、ぷいと横を向く。途端に、目の前の男はあからさまにため息をついて肩を竦めてみせた。 その所作に、全然、似合ってねぇよっと鼻を鳴らせば、男はぎろりときつい視線を残し、ふいっと背を向けてしまう。そんな二人に […]

続きを読む… from つれない態度に

泣きそうな笑顔に

お前、リーダーのこと好き? そう聞いて来たのは、マボだったか、太一君だったか、そんな昔の事なんて、すっかり忘れた。ただ、覚えてるのは、 「うん、大好き、超好きっすよ」 大きく頷いて、そう胸を張って応えた自分の返事だけだっ […]

続きを読む… from 泣きそうな笑顔に

全身で

漆黒に近い壁に包まれたアンダーグラウンド。 煌々と煌めく華やかな大都会と緩やかな沈黙に彩られた空間を遮るのは、ただ重厚な扉一枚のみ。 だが、この隔絶された小さな世界は、まったりとした大気に包まれ、疲弊した心をゆるりと癒し […]

続きを読む… from 全身で

黄昏時

藍の着流しに貝の口。 柔らかな髪を風に預けて、ゆうるりと長い影を落とす斜陽を背に受け、夏の宵を彩るようにからりからりと下駄が鳴る。 辺りを行く人波もなく、がしりとしたガタイの良い男は、袖口に手を預けるように、まだ、熱気の […]

続きを読む… from 黄昏時