sabato -サバト-

柔らかな青い日差しにふとまばたきを繰り返す。 無意識に手の甲で擦るぼんやりとピントのずれた視界に写る天井は、セピア色の夢の景。 ああ、また、あの夢や と音にならぬ声で溜め息をつく。 子供の頃、自分の意に関わらず繰り返した […]

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雨の金曜日-4-

耳朶に響いた柔らかな音。 どこか懐かしくて、遠い声。 小さな謝罪一つ落として、傍らを過ぎゆく男の腕を掴んだのは、心にのこったノスタルジー。 訝しむように顰められた表情が、どこか泣き出しそうな幼子に重なって。 我知らず、握 […]

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雨の金曜日-3-

明けて、月曜日。 空は笑うぐらいに澄み渡り、山口はちぇっと舌打ちをする。 いつもならば、思いっきり体を動かせる現場での仕事の訪れる月曜日という誰もが微かに疎ましく思う朝を、心待ちにしてるのになあ と腹にぺとりとくっついて […]

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雨の金曜日-2-

「シゲちゃんって母ちゃん呼ぶねん」 雨の中、濡れ鼠になった子供は、ほこほことした湯気に包まれながら、温もりをそのまま表したような柔らかい笑顔を浮かべた。   ***** 名前は? 嫌と言う間もなく剥ぎ取られた服 […]

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雨の金曜日-1-

次第に垂れ込めはじめた厚く重たい雲が空を覆い、まだ、夕方にかかったばかりの時刻だと言うのに、どこか薄暗い光に眉根を寄せる。湿った重い空気の匂いに、誰もが自然と早足となっていく。 ふと空を見上げるように立ち止まった男の脇を […]

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