一年目の9/21、一周忌だと騒ぐ長瀬を太一が殴るのを見ながら全員で大騒ぎをした。
当然、酒はなし。
二年目の9/21、上三人が乾杯するのを羨ましげに見下ろしている二人に片目を軽く瞑ってグラスを渡したのは山口。
三年、四年、五年目とそれは全員が成人するまで続いた公にはできない風景。
でも、何年目からだろうか、ドラマの撮影だ、司会だと、メンバーそれぞれにピンの仕事が増えだした頃から、お定まりのコースだった飲み会から、一人減り、二人遅刻し、と言う風に、5人全員が揃わなくなったのは。
それでも、電話を掛けていた頃、僕らの誕生日には、いつも全員の声が聞く事ができていた。
でも、と小さくため息をつくと、軽い明滅を繰り返す小さな機械を見下ろした。
震災後から、急速に普及し始めた携帯電話、そして、それに付随するメール機能に。
気がつけば誰の顔も見る事もなく、誰の声を聞く事もなく「何年目だね」という、律儀なA型の男からのメールさえも、日を跨いでから読む事が増えたように思う。
そして、と固い車の座席に背を預け、流れ行く光の渦に苦笑を浮かべた。
今年もまた、今日という日が誰と出会う事なく過ぎようとしている。まあ、自分が当日に気がついただけでも僥倖だろうか と。
突然、手の中で光ったそれに、ゆるゆると眠りの世界へと意識を誘っていた城島は思わず、おぅっと小さく悲鳴を上げる。
『貴方、何してんだよ、遅刻だよ遅刻』
それは、出会って20年以上、共にデビューを果たして、ちょうど、今日17年目を迎えた相棒の声だった。
「何?遅刻って」
『何ぼけた事言ってるの?明後日でしょ』
「ああ、ドリフェス?」
せやけど、と口ごもった城島の耳に届いたのは、キーボード担当のテンションの高い声。
『わかってんの?あんたさあ、俺等、ジャニーズの代表だよ』
さぼってないでさっさと来る。
あ、こら、長瀬 と遠くなった声にかぶさったのは、最年少にして我らがフロントマンのすねたような声。
『腹減ったっすよ』
受話器の向こう側、電話が切れる前に、ちょっと、兄ぃ、つまみ食いをしない と聞こえた料理上手のドラマーの声に、城島はくすりと笑みを浮かべた。
今日は、我らがTOKIOの17歳の誕生日。 久しぶりに揃ったバンドマン TOKIOの18年目のスタートは、名だたるアーティスト達が揃う音楽の祭典。
最高の始まりやね そう呟いた城島は、ギタリストの顔でにやりと笑った。