あの日、あの時、あの場所で
いつも、この日になると思い出すことがあるのだ。 あの日、あの時、あの場所で とても天気の良い日だったように思う。 四角いガラスに切り取られた深すぎる青空が見下ろしていたように覚えている。もしかしたら、それは後づけの記憶と […]
いつも、この日になると思い出すことがあるのだ。 あの日、あの時、あの場所で とても天気の良い日だったように思う。 四角いガラスに切り取られた深すぎる青空が見下ろしていたように覚えている。もしかしたら、それは後づけの記憶と […]
そこを通りかかったのは偶然に過ぎない。 そう、ただの偶然だ。 譬えこの後、5人揃っての撮りがあろうとも、ここで彼を見るつもりはなかったのだからただの偶然だ、と、『あの男』が他の誰かと談笑している渡り廊下を睨み付けながら、 […]
白茶けたショコラ色の粉末に覆われた柔らかなトリュフを招き入れるように小さな塊1つ分、唇が微かに開いていく。 色の少し悪いそれがゆっくりと蠢く度に、ちらりと見え隠れする結晶のような鮮やかな白。 卓上に置かれた小さな箱の中か […]
静かに押し開かれた扉の向う側、のっそりと現れた男の表情に、椅子から立ち上がりかけた松岡が思わず動きを止めた。 「兄ぃ」 それでも躊躇いがちに掛けられた言葉に、男は軽く手を挙げるだけで返事を返し、言葉もなく持っていたボスト […]
ちりりと胸の裏に焼けるような痛みが走る。 透き通る琥珀の虹彩に写り込む邪気のない笑み。 蕩けるような色を帯びたそれには、なんのてらいもなくただただ愛おしさと優しさだけが滲みだす。 ちり ちりり 鼻腔をくすぐるこの匂いを自 […]
「この間のソーラーカー見ましたよ」 珍しくメンバーうちでも早い時間に楽屋についていたらしい長瀬が、時間少し前に漸く腰を下ろした山口の姿に、にこりと振り返った。 「あ?」 「ほら、高知っすよ」 俺との後、リーダーとだったじ […]
小さい頃から誕生日に一人だったことなんてなかった。 ガキの頃は、誕生日だというとほんのちょっと前から自分の誕生日でもないのにぎゃあぎゃあうるさい姉と、朝からケーキは何にしようという母親にまとわりついて夕飯のごちそうを強請 […]
けぶるような白い雨のカーテンの向こう側。 風に揺れる緑が光を落とす。 水不足が囁かれていたはずの空は、今はどんよりと厚い雲が垂れ込めている。 雨を凌ぐように縁にひたりと体を寄せる北登の視界をふらふらと2本の足が揺れる。 […]
女心と秋の空 そんな喩えを聞いた事があるけれど、と、雲一欠片見えない、少し浅い青に包まれた天を見上げた。 ほんの僅か肌を刺すようなひんやりとした空気に、秋の色合いを感じながら、じゃりりと踏みしめた土が、かさりと小さな音を […]
今日は久しぶりに兄ぃとのロケだった。 多愛もない事で、ゲラゲラ笑い、莫迦みたいな事で頭を小突かれて、それでもやっぱり兄ぃとのロケは楽しい。 はらはらすることもどきどきすることもなく、どかっとした安心感からかもしれない。 […]