Songs
世界は音に満ちている 誰の言葉だったかは、覚えてない。 ただ、ああ、そらそうだろうな、と思った事は覚えている。 だって、ほら、世界はこんなに音で溢れているのだから。 とんとんとん […]
世界は音に満ちている 誰の言葉だったかは、覚えてない。 ただ、ああ、そらそうだろうな、と思った事は覚えている。 だって、ほら、世界はこんなに音で溢れているのだから。 とんとんとん […]
鞄の中は大丈夫。大好きなお菓子にゲームも入れた。 上着のポケットには小さなカード。 リーダーがくれたもの。大丈夫。忘れ物はどこにもない。 10回も確かめた。なのに。 何かが心に引っ掛かる。 このまま行っては駄目なのと。 […]
きゅっと扉を押し開く。 ポケットに突っ込まれたままの薄いカードは未来へ続く扉の鍵。 けどなあ、目の前に止まったオートカーと足下の鞄を交互に見比べる。 そこにあるのは自分の望む未来かと。 &nb […]
ごめんな。 くぅんと鳴く鼻先にきゅっと己の鼻が潰れるぐらいに押しつける。 でもさ、 と上げた明るい瞳子に陰はない。 仕方ないとは言わないよ 自分で選んだ事だだからときれいに唇が弧を描く。 さ、ここでお別れだ と降ろした愛 […]
とんっと、跳ねるように階段を飛び下りた。 俯き加減で行き交う人々を照らし出すのは、尽きる事を知らぬかのように煌煌とした人工灯。 澄んだ空は紛い物。 流れる雲は疑似映像。 あ〜あ、仕方ねえなあ と、片手の鞄を振り回すかのよ […]
頬を滑る甘い風。 髪に絡む空気は、ほのりとした暖かさ。 人気のない小さな公園の片隅で、濃密なまでの紅にゆるりと染まり始めた枝葉の春。 後、幾日もすれば、頑なまでに小さな蕾も膨らみ始める事だろう。   […]
ほろりと溢れた一つの音が、次の音へと連なって。 一つ、二つと音が増え、生まれた音が一つの旋律に姿を変えて新たな楽が満ちていく。 ぐるりと低くはない天井を見上げながら、まだ、誰も居らぬ店内の中央 […]
楽しい時間というものは夢の如く儚くて、後に残るは寄る辺をなくした哀れな子供。 誰もおらぬ店の真ん中で、見上げる先は熱の残らぬライブの香り。 あの頃、と誰に言うでもなく小さく口のなかで呟きながら […]
梅雨の晴れ間なのか、それとも空梅雨か。 城島の初出勤の日は、初夏と呼ぶにはふさわしい穏やかな陽射しが緑に眩しい朝だった。 明朝の九時に店に来るようにと言われた城島を出迎えてくれたのは、昨日出会った松岡と同じ […]
今から遡る事、丁度5年前の今日、一人の男が死んだ。 日付けが変わる境目の時刻に起こった足下の不安定な道端での転落死。 自殺なのか、はたまた事故なのか、判断のつかない死。 場所柄の為か、それとも事故の起こった時刻の所為か、 […]