Birthday Cake

自分がおいしそうだと思ったケーキを一緒に食べることが嬉しい。そう、彼がはんなりと笑みをこぼしたのは、今年の初めのこと。 おいしいものは一人で食べるより二人で食べる方が絶対美味いねんで と。 Birthday Cake 木 […]

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六花

きゅっと踏み締めた足の裏でさりさりと哀れなほどに崩れゆくは砂の山。 耳朶に届く切れることなき波の音。 寒さから逃れるようにいつもよりも丸くなった小さな背が、細められた視界の中を幼子のように駆けてゆく。 六花 一年で最も太 […]

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月の雫

かあ と啼く烏の声。 緩やかに暮れ行く秋の空。 見上げた視線に映り込む青に滲む薄い紅、淡い紫から深い瑠璃へと移ろいゆく様は、瞬きをする間にも刻々と姿を変えていく。だが、そんな情景もほんの束の間の儚い印象画。 秋の日暮れは […]

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こころのさんぽ

まばゆい光が大地に注ぎ、滴る緑が伸ばした指にほとりと落ちる。 梅雨と呼ばれる時節になってから数週間。 昨年よりも天の恵みを受ける事の少なかった稲の頭は、昨夜からの雨で漸く元気を取り戻したかのように、そよ吹く風に細い葉先き […]

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桜木

まだほのかな煙りが残る囲炉裏端、食後の一服を終えたらしいのそりとした人影がタオルを首筋にかけると外界から空間を切り離すように閉められていた障子を躊躇いなく開け放つ。 途端に、薄暗い室内に慣れた瞳孔が、差し込む光に付いて行 […]

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凛とした

ふと足を止めたのは小さな花屋の前だった。 店先を彩る真っすぐと伸びたその姿に、「今日なあ」そう小さく呟いた城島のどこか面映気な横顔がよみがえり、つと眼を緩めた。 ■■■ 緩やかな空間だった。 あまり多くない仕事を終え、さ […]

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七夕

今日 恋人たちの日として有名な七夕と言う日。 梅雨の合間に訪れるその日にしては、珍しい星夜に眼が綻ぶ。 一年に一度、愛する人に出会うことの許された日。 けど、と綻んだ口元をそのままに、とんと階段を両足で跳ねるように一段降 […]

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村 始めました

じゅくじゅくじゅく ひょいと超える小さな溜まりの面に映る小さな小鳥 じゅくじゅくじゅく 途切れる事ない囀りに、重なるなく羽ばたくその羽音が響く。 ああ、と思わず止めた足に、前をゆく相棒が小首を傾ぐように振り返った。 「奇 […]

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