今日 恋人たちの日として有名な七夕と言う日。
梅雨の合間に訪れるその日にしては、珍しい星夜に眼が綻ぶ。
一年に一度、愛する人に出会うことの許された日。
けど、と綻んだ口元をそのままに、とんと階段を両足で跳ねるように一段降りると、くくっと喉の奥で小さく笑う。
梅雨の合間に訪れるその日にしては、珍しい星夜に眼が綻ぶ。
一年に一度、愛する人に出会うことの許された日。
けど、と綻んだ口元をそのままに、とんと階段を両足で跳ねるように一段降りると、くくっと喉の奥で小さく笑う。
耐えられんわなあ と誰に聞かせるでもなく溢れる音。
二週間に一度の逢瀬ですら、もの足りず、ため息が溢れてしまうと言うのに。
いくら神様とはいえ酷な事をする。
だから、日本中が浪漫に酔いしれる今宵の祭りを、城島は諸手を上げて歓迎はしない。
だって、自分に置き換えたら、と思ってしまうのだ。
だが、今目の前に、波高く豊かな川がこの行く手を塞いだならば?
全く泳げないわけではないが、得手とは言いがたい自分は、果たしてそれに逆らってまで泳げるだろうか?
「まあ、泳がんでも、何がなんでも渡るけどな」
そう、かつて、小さな鞄一つを手に、まだ出会ってすらいなかった彼らを思い描き、しかりとした足場のない道を歩くために、見送る人のない田舎の駅を旅立ったように。
7月7日 愛する人たちに出会うため、濁流をものともせずに船出した大切な日。