Jyoshima & Nagase

このまま

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60歳になっても、80歳になっても、TOKIOを続けよう それが俺たちの合い言葉。 俺たちはずっとTOKIOで、ずっと一緒に走り続けて行く。 それは夢と曖昧な形よりも、現実に近い未来。

でも

時折、思うんだ。 もし、この人がいなくなったらって?

俺は、子供のときに親父が死んで、お袋と姉貴とずっと3人暮らしだった。 親父が死んだ時は、俺はまだちっちゃくて、多分、その意味さえぜんぜんわかってなかったから。 その時は周りの人がなんで泣いてるのかさえわかんなかった。だって、お袋は、笑っては居なかったけど、いつもと変わんなかったって記憶がある。 でも。

いつだったか、まだ、俺が事務所に入ってなかったぐらいだから、小学校だったとは思うんだけど、小便に行きたくて夜中に起きたことがあったわけよ。一度寝付いたら朝まで起きねぇガキだったからさ、それ自体すっげえ、珍しい事だったんだけど、その時、俺は初めてお袋が泣いている姿を見たんだ。 細く開いた扉の隙間から見えた、台所の小さなテーブルに座って手の中の小さな箱、写真立てらいしものを見ながら震えている背中。 なんか、子供ながらに見ちゃ行けないものをみちゃったんだって、思ったね。その時は、小便するのも忘れてあわてて布団頭っからかぶって寝ちまったんだけど(朝起きたら、布団がしっかり濡れてて、お袋にがっつり叱られたよなあ、あれが人生最後のオネショって奴?)、今考えたら、親父の命日だったんじゃないかって思うんだよね。

若くして死んだ親父をさ、法事の時に、回りのおっちゃんやおばちゃんが可哀想にって嘆くんだけど、多分、あれだと思う。本当はさ、死んじまった人よりも残された人の方がつらくて可哀想なんじゃねぇのってさ。そりゃさ、まだまだたくさんしたいこともあったろうし、ガキ二人の美人の嫁さん残して逝っちゃったんだからさ、それこそ山のように心残りもあっただろうし、つらかったと思うよ。 でもね。 死んじまった時は、押し寄せるような現実に、ただ押しつぶされないように両足を、こう、頑張って踏ん張ってるから、なんとか大丈夫だと思うんだけどさ、後から、こう、なんつうのかな、くるっての? その人がいないってことを感じるんだと思うよ? 親父が死んで、何年も経ってからも、写真見て泣いちまううちのお袋みたいにさ。

でも、それを消化できちまったお袋は強いと思うんだわ。

だってさ。 なんていうのかな、俺、今だってやばいもん。 もし、この先、何年、ううん、何十年後であったとしてもさ、この人が居なくなったらって? そう考えるだけで、鼻の奥が、がつって痛くなってさ、たまんなくなるんだ。

ああ、死んじまったんだ〜 ってその時は思うと思うんだけどさ。そりゃ、悲しいだろうから、ぐぉ〜って泣くだろうし、回りの硝子がびりびり言うぐらい叫んじまうと思うよ。 そう言うのとは、違うんだ。 何かしたとき、ふと、ああ、居ないんだって思うわけじゃん。 今だってしょっちゅう一緒に居られるわけじゃないけど、離れてても、この人はこの世界のどっかに居るわけでしょ。でも、違うんだよ。 死んじゃうってことは、もう、この世界のどこにも居ないって事でしょ? ああ、声聞こうって思っても、聞けねぇし、会いたいって思っても会えないんだよ?ああ、違うか、存在がないって言う事が信じられなくて、それがきっと淋しいって事なんだと思う。

で、恥ずかしながら、俺はそれに耐えられるって思えないんだよね。 だって、小学校6年の時から一緒にいる人だよ? 居るのが当然で、居ない方が変な存在なのにさ、それが消えちゃうってことは、そっか、すっげぇ。空気がなくなるのと同じぐらい大変な事じゃん。 やっぱ、俺、耐えれねぇわ。

でも、だからってさ、俺がこの人より後に死んじゃったら、この人も同じ思いするってことだからさ、それも嫌なんだよな。だって、自分がされたら嫌な事を人にしたらダメだって、この人が教えてくれたんだし。

だから、一緒が良いなって思うんだ。 この世界から互いの存在が消えちゃったんだって、思わなくって良いように。 その瞬間も、この人と一緒だったら良いのにな。 この世界に存在したのは、確かにこの人の方がずっと先かもしれないけど、TOKIOとして生を受けたのは一緒だからさ。 TOKIOがなくなる瞬間は一緒が良いな。

だからさ、その時は一緒にこの世界からいなくなろうよ。 でも、きっとリーダーと俺が一緒にいなくなったら、ぐっさんは抜け駆けだって俺を怒るだろうし、マボは、真っ赤になって怒る気がする。太一君は、バッカじゃねぇのお前って言いながら、わんわん泣きながら怒鳴りそうだよね。そんな風に皆に叱られるのも、嫌だからさ、皆一緒にいなくなろうよ。

そしたら、俺も淋しくないし、リーダーも寂しくないでしょ。

ま、そんな瞬間が、両手両足を足した先よりも、ずっと後になることを祈ってるけどね。

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